抄録
近年内視鏡は診断の時代から一歩進んで,消化管の病態生理を解明する手段として応用されてきている.私たちは,脂肪の消化吸収の内視鏡的研究を進める中で,細胞内転送過程に注目し,種々の病態について発表してきた.コルヒチンもその1つであり,吸収上皮細胞内の微細小管を障害してカイロミクロンの放出を阻害し,内視鏡的には十二指腸白点として観察される.私たちは,葡萄膜炎の治療のためにコルヒチンの使用を受け,持続性下痢を来たした症例を経験し,色素散布および脂肪負荷による拡大内視鏡検査と共に,十二指腸粘膜生検材料について実体顕微鏡ならびに電子顕微鏡にて絨毛形態と脂肪の細胞内転送過程について検討したので,動物実験の成績を加えて報告する.