抄録
過去2年間に,100例の上部消化管緊急内視鏡検査を施行した.症例は吐・下血後48時間以内に内視鏡検査を行なったものに限定した. そのうちわけは,胃潰瘍44例,十二指腸潰瘍19例,食道・胃静脈瘤11例,Mallory-Weiss症候群11例,吻合部潰瘍2例,出血性胃炎2例,食道炎2例,胃癌1例,胃ポリープ1例,喀血1例,鼻出血1例,出血巣不明5例であった. 67例は内科的治療で止血したが,33例に外科的手術が行なわれた.死亡例は4例で,いずれも消化管出血以外の原因疾患による全身状態不良のため,姑息的治療に終らざるをえなかった症例であった. 本検査施行前に,血圧,ヘマトクリット値,心電図を検査し,原則として血管確保の上,本検査を施行し,偶発症は経験しなかった. 本検査により,早期に出血部位およびその性状を確認することは,その後の治療方針確定のためにきわめて有意義であると考える.