日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
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ISSN-L : 0387-1207
23 巻, 2 号
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  • 東 光生
    1981 年 23 巻 2 号 p. 189-201
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    上部消化管内視鏡検査によって心停止などの循環器系隅発症が発生している.そこで胃内視鏡検査が循環器におよぼす影響について内視鏡検査直前,検査中,検査後に血圧,心電図,ベクトル心電図を測定および記録し比較検討した.対象には,60歳以上の老年者を選んだ. 血圧(収縮期血圧)は,20例中17例(85%)に内視鏡検査中に上昇がみられた.心拍数は,全例とも検査前に比較して増加した.不整脈は,35例中2例(5%)に認められた.心筋の虚血性変化は,心電図およびベクトル心電図を記録した54例中22例(40%)の高率に認められた.これらの結果は,いずれも隅発症に発展する危険性をふくんでいる. 心筋虚血,心停止などの循環器系隅発症をおこす因子として内視鏡検査時の心拍数の増加,血圧の上昇および内臓反射などが考えられる. 老年者の上部消化管内視鏡検査にあたって循環器系隅発症を予防するためには,少なくとも検査前に血圧および心電図を必ずチェックし,患者の基礎疾患を十分に把握しておく必要がある.
  • 針間 喬
    1981 年 23 巻 2 号 p. 202-211
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    17例の大腸結核症(疑診例7例を含む)について,その臨床像,確定診断法,X線像の検討を行なった. 平均年齢は54歳,男性7名,女性10名である.活動性肺病変を認めたものは2例だけであった.赤沈値,ツベルクリン反応はほとんどの例で亢進を示した. 17例中潰瘍形成を認めたものは12例であった.内視鏡を用いた生検材料の結核菌培養で,抗結核剤未投与例10例中9例(90%)に結核菌を証明した.生検部位は潰瘍辺縁および潰瘍底であり,培養陽性率と潰瘍の形態(大きさ,深さ)との間になんら関連はみられなかった. 一方,生検組織診で1例だげ肉芽腫を認めたが,乾酪性壊死は得られなかった. 活動期の結核性潰瘍底には結核菌が必ず存在し,大腸結核症の確定診断には,生検組織診よりも生検材料の結核菌培養が有効であると考える. また大腸結核X線像についての追跡・検討を行なった. いわゆる「潰瘍瘢痕を伴う萎縮帯」をもたない症例が,確診例10例中3例にみられたが,「潰瘍瘢痕を伴う萎縮帯」所見の有無と全盲腸病変との関係について検討し,大腸結核X線像をABCの3群に分類した.
  • 福田 一雄, 豊永 純, 安元 真武, 池園 洋, 周山 秀昭, 下河辺 正行, 宮園 一愽, 里見 隆彦, 村山 俊二, 佐野 栄二郎, ...
    1981 年 23 巻 2 号 p. 212-223_1
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    内視鏡的に食道静脈瘤を認めた門脈圧亢進症170例を門脈外科研究会の食道静脈瘤内視鏡判定規準に基づき分類し,静脈瘤破綻予知とその評価を目的に検討した. 消化管出血例は54例で静脈瘤破綻例が26例(48.1%),次いで出血性胃炎が18例(33.3%)と多い.内視鏡的に静脈瘤からの出血を直接確認し得たのは2例の7.6%しかなく,他の例はSengstaken-Blakemore tube挿入時の所見と内視鏡所見から総合的に診断しているのが現状である.内視鏡所見の赤色所見例で静脈瘤破綻率が38.0%と有意に高く(p<0.01),とくにhematocystic spot例は78.5%に静脈瘤破綻をみ,破綻予知には重要な所見であった.内視鏡の経時的推移から,stage2は10.2±2.5ヵ月で63.6%がstage3へ変化しており,少なくとも6ヵ月毎の内視鏡的観察を必要とし,赤色所見例は出血の既往がなくとも積極的に予防手術をすべきであることが臨床経過から示唆された.
  • 水入 紘造, 水吉 秀男, 若松 貞男, 古河 一男, 安部井 徹, 新藤 健
    1981 年 23 巻 2 号 p. 224-230_1
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    Mallory-Weiss症候群は20歳の男性.アルコール摂取し頻回の嘔吐後に,吐血を主訴として来院.内視鏡検査で胃噴門部小彎に裂創を認めた.Boerhaave症候群は57歳の男性.食後に1回ほど嘔吐し,その直後より胸痛が出現した.胸部X-Pで気胸と胸水を認めた.第6病日に内視鏡,食道造影より食道・胃接合部直上の左側食道壁に破裂孔を認め,特発性食道破裂の診断のもとに緊急手術が施行されたが,敗血症,消化管出血を合併して死亡.急性長軸線型胃潰瘍は77歳の男性.高血圧でレセルピン,腰痛で鎮痛剤を服用していたら黒色便が生じた.内視鏡検査で胃噴門部後壁に線状潰瘍を認めた.強度の貧血のために2,000ml輸血した.前2者は腹腔内圧の上昇機転の後に出現し,Mallory-Weiss症候群では噴門部小彎,Boerhaave症候群では食道下部左側壁に好発する.急性長軸線型潰瘍はMallory-Weiss症候群と鑑別すべき疾患であり,これらの診断には早期内視鏡検査と共に問診が重要である.
  • 江崎 隆朗, 加藤 展康, 井上 幹茂, 重田 幸二郎, 武波 俊彦, 古谷 晴茂, 斉藤 満, 沖田 極, 岡崎 幸紀, 竹本 忠良
    1981 年 23 巻 2 号 p. 231-239
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    過去2年間に,100例の上部消化管緊急内視鏡検査を施行した.症例は吐・下血後48時間以内に内視鏡検査を行なったものに限定した. そのうちわけは,胃潰瘍44例,十二指腸潰瘍19例,食道・胃静脈瘤11例,Mallory-Weiss症候群11例,吻合部潰瘍2例,出血性胃炎2例,食道炎2例,胃癌1例,胃ポリープ1例,喀血1例,鼻出血1例,出血巣不明5例であった. 67例は内科的治療で止血したが,33例に外科的手術が行なわれた.死亡例は4例で,いずれも消化管出血以外の原因疾患による全身状態不良のため,姑息的治療に終らざるをえなかった症例であった. 本検査施行前に,血圧,ヘマトクリット値,心電図を検査し,原則として血管確保の上,本検査を施行し,偶発症は経験しなかった. 本検査により,早期に出血部位およびその性状を確認することは,その後の治療方針確定のためにきわめて有意義であると考える.
  • 武藤 徹一郎, 上谷 潤二郎, 沢田 俊夫, 杉原 健一, 草間 悟
    1981 年 23 巻 2 号 p. 241-247
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    内視鏡的ポリープ摘除によって診断した早期癌(m,sm癌)21病変中7病変の周囲粘膜に内視鏡的に観察しうる白斑を認めた.同時期に観察した良性腺腫には,同様の所見は1例にしか認められなかった. 組織学的には,この白斑はH.E.で淡く染まる顆粒を含有する組織球の,表層上皮直下の粘膜固有層への集簇よりなっており,PAS-alcian blueで淡青色に,Mucicarmine,Toluidine blueで弱陽性に染った.電顕では,electron-densityのない円形顆粒の中に,わずかにdensityのある顆粒が混在して認められた.組織化学的にはこの白斑の性状はMuciphageに最も類似していると考えられた.その本態については,いくつかの可能性が示唆されたが,完全には解明しえなかった。 この所見は,良性腺腫・大腸腺腫症の腺腫の周囲粘膜,潰瘍性大腸炎などにも稀に見出されたが,内視鏡的にポリープ周囲粘膜に白斑を認めた場合には,悪性を強く疑うことができるという点で,臨床的に重要な所見であることを指摘した.
  • 中島 俊雄, 坪井 正夫, 和田 潤一, 上野 恒太郎, 石川 誠
    1981 年 23 巻 2 号 p. 248-252_1
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    直腸部の微小隆起性病変の発見及び生検組織診断を行う目的で,シグモイドファイバースコープを用いた下部結腸スクリーニング検査時に,色素散布法による観察を行なった.便通異常,下血,腹痛等を主訴として来院した当科外来患者から無作為に描出した217例の症例中64例,30%に微小隆起を認めた.この隆起は,通常の観察では識別がきわめてむずかしい5mm以内の隆起であった.隆起は単発の場合と,複数発生している症例があり,組織診断では微小隆起の約60%が正常大腸粘膜であったが,そのほか化生性ポリープ,腺腫もあった.直腸原発の微小癌は発見されていないが,転移性癌の微小隆起が1例認められた.本法は,癌の好発部位である直腸S字状結腸の微小隆起性病変の発見を容易にでき,ルーチン検査に用いることにより,微小癌の発見に有用と考える.
  • 井戸 健一, 堀口 正彦, 古杉 譲, 野上 和加博, 長沢 貞夫, 吉田 行雄, 田中 昌宏, 関 秀一, 酒井 秀朗, 山中 桓夫, 木 ...
    1981 年 23 巻 2 号 p. 253-263
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    膵癌30例,慢性膵炎7例の計37例に腹腔鏡検査を施行した.膵頭部癌16例は1例を除いて全例に胆嚢腫大を伴う緑色肝を認めた.胆汁うっ滞の明らかな膵頭部癌症例では敢えて膵観察を試みず,腹腔内転移の有無を重点に観察した.膵体尾部癌,慢性膵炎例にはSupragastric Methodにより膵近接拡大観察を試みた.膵観察を試みた症例のうち体尾部癌の90.9%(10/11),慢性膵炎の57.1%(4/7)に膵観察が可能であった.慢性膵炎では膵の白色調が強く,硬度が増していた.症例によっては分葉構造の消失,微細血管の増生が認められた.一方,癌が膵被膜まで侵潤している症例では表在微細血管の狭窄,途絶像が認められた.しかし癌が被膜まで侵潤していない比較的早期症例では肉眼的に慢陛膵炎と鑑別することは困難であった.細径穿刺針(外径0.65mm)による吸引生検を7例に施行し,5例に正診が得られた.以上の結果から膵癌に対する腹腔鏡検査および直視下膵吸引生検は診断の確定,治療方針決定に有用な手技であると考えられた.
  • 久野 信義, 木戸 長一郎, 春日井 達造, 松浦 昭, 栗本 組子, 伊藤 克昭, 種広 健治, 杉原 康弘, 加納 知之
    1981 年 23 巻 2 号 p. 264-273
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    膵癌の診断,殊に切除可能な比較的早期の膵癌の診断は現在の処なお容易ではない.今回は,膵癌におけるERCP,US,CT,RIなどの映像診断法の診断能,特徴などを検討すると共に,それらを含めた膵癌の診断体系についても言及した.膵癌全体では,上記4者ともその診断率は何れも80%前後で,また相補的診断率は100%である.併し切除可能例の確診率は,4者の中ではERCPが最も高かった.従って現在の処,切除可能例を如何にしてERCP迄もって行くかということが,最も重要なことであり,そのためのdecisiontreeの一つを提案した.
  • 原沢 茂, 菊地 一博, 瀬上 一誠, 渡辺 浩之, 野見山 哲, 三輪 正彦, 鈴木 荘太郎, 谷 礼夫, 三輪 剛
    1981 年 23 巻 2 号 p. 274-282
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    若い年代の疾病と考えられている十二指腸潰瘍は,最近では高年齢者においてもその発生がみられている.そこで高年齢者の十二指腸潰瘍は若い年代のそれと臨床面および病態生理の面において相違があるかどうか比較検討し,高年齢者の十二指腸潰瘍の実態を明らかにすることを目的とした.その結果,50歳以上の高年齢者の十二指腸潰瘍は,症状としては疼痛の頻度が比較的に低く,顕出血の頻度が比較的に高かった.また幽門狭窄症状も若年者のものと同様多い傾向がみられた.合併胃潰瘍の頻度も高かった.臨床検査上の点からは,酸分泌能は高年齢者にも拘らず過酸の状態が保たれ,Congo-redpatternもclosed typeが中心でそれを裏づけていた.胃排出機能の亢進の状態は高年齢者において一層強く,再発既往との相関が明らかであった.治療との関係では治癒係数からの検討では高年齢者において治癒遷延の傾向が認められた.
  • ―広視野角大腸ファイバースコープの試作―
    丹羽 寛文, 木村 正儀, 三木 一正, 平山 洋二, 池田 昌弘, 張 景明, 半井 英夫
    1981 年 23 巻 2 号 p. 283-291
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    大腸ファイバースコープの操作性,観察能をより向上させるため,広視野角(120。)大腸ファイバースコープを試作し,検討した.これによれば,腸管の強い屈曲部でも腸管の走向確認が容易であり,S状・下行結腸移行部,左右結腸曲の通過に際し大きい利点が得られた.また,近接でも比較的広範囲が観察された.さらに,従来のファイバースコープでは盲点となりやすかった半月弁のかげ,強い屈曲部の内側面などにおいても,観察性能がすぐれていた.また,腸管の走向とスコープの軸が一致した場合には,内腔の望遠像と共に,スコープ先端に近い部が広範囲に正面像に近く観察された.一方距離の違いによる病変の大きさのみかけ上の極端な変動,近接時の像の歪みが認められたが,これらは問題となる程の欠点ではないと思われた.以上より,大腸ファイバースコープの光学系はより広角にすべきものと考えられた.
  • 久山 泰, 玉城 信明, 別所 博子, 中村 理恵子, 宮坂 京子, 林 正孝, 岡田 弘, 岡本 真郎, 桃井 宏直
    1981 年 23 巻 2 号 p. 293-299
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    われわれは・過去10年間に当科にて悪性リンパ腫と診断され,何らかの方法で消化管を検索しえた症例44例を対象とし・悪性リンパ腫の消化管病変について検討した.Hodgkin'sdiseaseとNonHodgkin・slymphomaに大別し浸潤病変を検討すると,それぞれ9例中1例11.1%,35例中10例28.6%に浸潤病変が認められた.臓器別では,胃6,小腸6,大腸3病変と,胃および小腸に多くみとめられた.また初期胃浸潤病変と思われる亜c様病変を約3年間経過観察し,胃切除を施行した1例を提示し,胃悪性リンパ腫の初;期病変に関しても考案を加えた.さらに消化管の良性病変に関して検討してみると,44例中10例に潰瘍を,8例にビランによる大量出血を.その他真菌症等を認めたが,良悪性病変ともに,大量出血,穿孔等直接の死因となることも少なくなく,予後を考える上で早期診断と適切な処置,治療が重要であると思われた.
  • 郡 大裕, 児王 正, 本井 重博, 布施 好信, 福田 新一郎, 内藤 英二, 多田 正大
    1981 年 23 巻 2 号 p. 301-304_1
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    近年,内視鏡器機の改良や内視鏡検査手技の進歩と相俟って,小児科領域にも内視鏡検査が応用されるようになった.今回私達は,内視鏡的に幼児の上部消化管内誤飲異物摘出に成功したので報告した.患児は1歳と2歳の幼児で,いずれもマチ針を誤飲し,1例は胃壁に,他例は十二指腸壁にマチ針が刺入していた.全身麻酔下に内視鏡(GIF-P2,Olympus)を用いて患部確認後,内視鏡下に六角型スネア鉗子を用いてマチ針の抜去・回収に成功した。尚,術中および術後に何ら合併症を認めなかった,以上の自験例をもとに,小児科領域への内視鏡応用の有用性について考察を加えた.
  • 川嶋 正男, 河村 奨, 飯田 洋三, 富士 匡, 清水 道彦, 有山 重美, 東 光生, 前谷 昇, 播磨 一雄, 永冨 裕二, 相部 剛 ...
    1981 年 23 巻 2 号 p. 305-311
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    残胃の癌は,初回の胃切除術が良性疾患に対して行なわれたか,悪性疾患に対して行なわれたかで大きく2つに分けて考えることができる.今回われわれはretrospectiveに検索し,初回の胃切除術後10年以上を経過して診断された広義の残胃癌8例を認めた.このうち初回の胃切除が胃癌に対して行なわれたものが4例(広義の残胃癌)あり,うち3例は早期胃癌,1例は進行胃癌であった.また初回の胃切除が良性疾患に対して行なわたものが4例(狭義の残胃癌)あり,うち3例は胃潰瘍,1例は十二指腸潰瘍であった.これら8例の残胃癌はすべて進行癌で,かっ腺癌であり,6例がBorrmann3型,2例がBorrmann2型であった.残胃癌は進行癌として発見されることが多く,狭窄が加わるとさらに残胃内腔が狭くなり残渣も多くなるため内視鏡診断に際しては機種の選択に注意する必要がある.とくに細径直視型ファイバースコープ。が有用である.なお,初回胃切除が胃癌に対して行なわれた4例は,もっと術後の追跡をきちんとすべきであったことが反省点として上げられた.
  • 木村 徹, 元山 誠, 竹沢 二郎, 栗原 正英, 桑原 武夫, 田中 昌輝, 長坂 一三, 山路 達雄, 都築 靖, 乾 純和, 樋口 次 ...
    1981 年 23 巻 2 号 p. 313-319
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    34歳の男性で,上腹部痛・体重減少を主訴として来院し,胃透視,胃内視鏡検査の結果,スキルス類似の所見を示した.すなわち,胃透視では,胃全体の伸展不良と胃壁の硬化像を認め,胃内視鏡では,同じく送気による胃全体の伸展不良がみられ,粘膜皺壁は粗大顆粒状に肥厚し,走行に規則性がなかった.生検組織診では,悪性細胞は認められなかった.切除胃には潰瘍や腫瘍は認められず,組織学的には粘膜固有層内に類上皮細胞とLanghans巨細胞を伴った肉芽腫を認め,胃結核と診断した.結核菌は陰性であった.
  • 石原 健二, 久本 信実, 木原 彊, 山本 康久, 佐野 開三
    1981 年 23 巻 2 号 p. 320-326_1
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    十二指腸脱出性胃病変のうち上皮性腫瘍については多くの報告があるが,粘膜下腫瘍の脱出・嵌頓は従来からきわめて稀なものと考えられている,著者らの集計では本邦で24例あり,その半数は胃体部以上に基部を有するもので,50歳以上の高齢者に多かった.本稿ではその1例の内視鏡像,臨床像について報告し,胃の高位にある無茎性腫瘍の十二指腸脱出機序と診断を中心に,過去報告のあった有茎性腫瘍例と対比しながら統計的考察を加えた. 症例は74歳女性で心窩部痛および反覆する嘔吐を主訴として来院.精査の結果胃体上部小彎後壁寄りに基部を有する巨大な粘膜下腫瘍が,十二指腸球部まで嵌入していることが判明した.手術の結果,腫瘍の大きさは8×5.5×5.5cm,重量130g,無茎性で表面は平滑,割面はスポンジ様で一部に出血をともなっていた.病理組織学的には,脱出性胃腫瘍としては本邦3例目にあたる神経鞘腫であった.
  • 西川 久和, 林 伸行, 森瀬 公友, 恒川 次郎, 兼城 賢明, 加藤 義昭
    1981 年 23 巻 2 号 p. 327-333
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    放射線照射による消化管粘膜の障害は古くから知られているが,胃粘膜障害の報告は比較的稀である.最:近われわれは肝癌に対する60Co照射後,頑固な出血性胃十二指腸炎を来たし,絶食,IVHにより治癒した症例を経験した.症例は56歳男性で貧血を主訴として入院した.入院3ヵ月前に肝癌と診断され,60Co照射を肝門部に3,960rad受けていた.入院時WBC2,400/mm3,RBC2.17×106/mm3,Hb7.4g/dlであり便潜血は強陽性であった.上部消化管X線検査及び内視鏡検査で胃前庭部と十二指腸球部に限局した出血性びらんと診断した・輸血をくり返したが,食事摂取により胃出血が増加し,短時日で貧血になるため絶食により胃の安静を保ち,出血を抑えIVHを施行したところ,約2ヵ月で出血性ビランは消失し,貧血も改善した.穿孔,狭窄など手術の絶対適応となる合併症のない難治性の放射線胃腸障害に対して絶食IVHが著効を奏した1例である.
  • 原口 増穂, 牧山 和也, 橘川 桂三, 小森 宗治, 井手 節, 福田 博英, 森 理比古, 村上 一生, 今村 和之, 田中 義人, 中 ...
    1981 年 23 巻 2 号 p. 334-339_1
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    近年消化器内視鏡検査の進歩によって,内視鏡的ポリペクトミーが急速な勢いで普及しているが,それに伴って,胃や大腸と同様に,十二指腸における隆起性病変に対しても内視鏡的ポリペクトミーが試みられるようになった.今回われわれは,上腹部痛を主訴として来院した患者に,上部消化管X線検査で十二指腸下行脚に隆起性病変を認め,内視鏡的ポリペクトミーにて摘除し得た1例を経験した.摘除した腫瘤は,大きさは26×25×9mmの山田IV型のポリープ,組織学的には腺管腺腫であった. 十二指腸における隆起性病変を内視鏡的にポリペクトミーした症例が本邦においても報告されるようになったので,ポリペクトミーの意義と適応などについても文献的考察を行った.十二指腸においても,胃や大腸と同様に,内視鏡的ポリペクトミーは,完全生検と治療の両面で意義があり,極めて有用で積極的に行っても良いと考えられた.しかし早期癌や粘膜下腫瘍の場合や,合併症,回収の面において,なお幾つかの問題点があることを指摘した.
  • 関 宗光
    1981 年 23 巻 2 号 p. 340-347
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    悪性サイクルの3年以上の長期観察例は極めて少い.またその経過中3回も治癒再発をくり返した症例も極めて稀である.特にProspectiveに生検をくり返した例は最近数例が報告されているにすぎない.著者は胃角小彎に生じた良性と思われる潰瘍を内視鏡的に生検をくり返して経過を追跡し,3年後生検(+)となった症例について,その内視鏡的所見を検討した.その結果最初に潰瘍を発見してから4ヵ月後に出現した浅い潰瘍面における再生粘膜島は既に悪性であるか,または将来悪性化する可能性が大であることを示す重要な所見と考えられる.胃癌の発生経過は数年を要するものと考えられ,生検(一)の数年間に出現する悪性化を示す所見は臨床的に重要なものと考えられる.
  • 藤田 潔, 飯田 洋三, 富士 匡, 平田 牧三, 小田原 満, 渡辺 正俊, 河原 清博, 針間 喬, 東 光生, 前谷 昇, 有山 重美 ...
    1981 年 23 巻 2 号 p. 349-354_1
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    われわれは,アサヒ光学社製前方直視型ファイバースコープFG 28 Aを,出張胃集団検診精密検査205例と,ルーチン検査86例に用い,その有用性について検討した. 逐年胃集検の場においては内視鏡機器の機能とくにその挿入性,観察能,記録性の良し悪しは集検成功に重要なポイントとなる.この機種の挿入は容易であり,観察能も他の直視型ファイバースコープと同様体下部後壁の正面視は困難な例を見るものの,食道や十二指腸における反転観察も容易であり,上部消化管はほぼ万遍なく観察できる.記録性も良好であり76°の視野全体が充分に読影可能である.生検能は正面視困難な体下部ではやや問題が残る.
  • 三隅 一彦, 有山 襄, 池延 東男, 島口 晴耕, 白壁 彦夫
    1981 年 23 巻 2 号 p. 355-361
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    超広角側視型十二指腸ファイバースコープ(FUJINON FD-QB)を使用してERCPを施行し,従来の視野角64°のスコープに比較して選択的造影の成功率を向上させることができた.本スコープで374例にERCPを行い,369例(98%)に挿管できた.目的別挿管率は,膵管211/219(96%),胆管106/122(87%),膵胆管30/33(90%)であった.本スコープの特徴は側視105°の視野角を持ち,従来の側視型スコープと比較すると,1)超広角のため広い範囲にわたり十二指腸内腔を観察できる.また,Vater乳頭部の確認が容易である.2)開口部が下方から観察できるので,胆管への挿管率が向上する.
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