抄録
十二指腸のシモフリ病変について,内視鏡で診断された1,556例の十二指腸球部潰瘍症例と,その中でシモフリがみられた233症例を対象に検討した. シモフリは,球部潰瘍症例の15%にみられ,多くは潰瘍の周囲に広範囲に観察された. 1)内視鏡像は小白苔と発赤が基本で,その程度は症例によって異なっていた. 2)病理組織学的には組織欠損の程度に差こそあれ,びらん性の変化に伴う非特異性の炎症反応であった. 3)シモフリの臨床的意義として,シモフリは,潰瘍と深い関係がある病変で,潰瘍の経過の中でも比較的初期にみられる変化であろうと推察した.また,シモフリ非観察潰瘍群との間に治癒,再発に関する差は認められなかったが,シモフリを随伴した症例の経過が長くなる傾向がみられた.