抄録
東海大学病院での胃癌手術例356例のうち,十二指腸潰瘍を合併する6例について,術前検査(内視鏡検査,胃透視,色素内視鏡,胃液検査,胃排出能),病理学的所見(占居部位,肉眼型,組織型,深達度)にっき検討した.胃酸分泌能は全例が正・過酸を示し,congo-red法では萎縮性胃炎の広がりは,比較的軽度であった.癌の占居部位は全例幽門線領域に限られていた.肉眼型はIIc型およびIIc+III型またはそれらに類似したものであり,深達度は6例中5例がmであり,1例はpmであった.これらの結果からつぎの推論をした.(1)十二指腸潰瘍による自覚症状のため,癌が早期に発見された.(2)胃酸分泌能がよく保たれており,そのため悪性サイクルまたはそれに類似した変化をくり返し,長期間,癌が粘膜内にとどまっていた.