日本消化器内視鏡学会雑誌
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原発性胆汁性肝硬変症のERCP所見の特徴とその意義
矢崎 康幸関谷 千尋高橋 篤富永 吉春大原 和明長谷部 千登美小野 稔鈴木 貴久並木 正義
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1982 年 24 巻 11 号 p. 1695-1707

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抄録
 比較的早期の原発性胆汁性肝硬変症(primary biliary cirrhosis,以下PBC)12例の内視鏡的逆行性胆管膵管造影(Endoscopic retrograde cholangiopancreatography,以下ERCP)所見につき検討した.全例,膵管系には異常なく,胆嚢結石が1例に認められた.左右肝管を第一分枝として肝内胆管4次分枝までしか造影されなかった6例では胆道X線像に特別な異常を認めなかったが,5次分枝以上末梢胆管まで十分造影された他の6例全例に,4~5次分枝以上末梢胆管周囲に1~5mmの点状または斑状の造影剤漏出所見(periductal oozing)がみられ,内3例には5次分枝以上末梢胆管に点線状の胆管像(dotted line appearence of intrahepatic bile ducts)がみられた.これらの症例の肝生検組織所見では外径およそ40~80μ 程度の胆管の変性破壊が著明であるが200~250μ 程度のさらに太い胆管もしばしば障害されていた.今回,得られたperiductal oozing,dotted line appearence of intrahepatic bile ductsの所見は各々この程度の太さの障害胆管の破綻部よりの造影剤漏出,およびsegmentalな胆管病変を直接に反映しているものと考えられた.一方,肝内胆管5~7次分枝まで十分に造影された対照の各種疾患32例ではPBC症例の肝内胆管末梢枝にみられた前記2つの異常所見は,まったく認められなかった.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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