日本消化器内視鏡学会雑誌
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上部消化管出血に対する局所用トロンビンの止血効果に関する検討
伊藤 誠犬飼 政美勝見 康平横山 善文安江 直二後藤 和夫野口 良樹鋤柄 宏高畑 正之鈴木 邦彦寺尾 直彦武内 俊彦
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1982 年 24 巻 11 号 p. 1714-1720_1

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抄録
 上部消化管出血に局所用トロンビンを用い,止血法としての有用性を検討した. 基礎的検討として,胃生検部の出血にリン酸緩衝液で溶解したトロンビン1万単位を内視鏡下で撒布した.止血までの時間は58.0±31.5秒で,緩衝液のみの対照138.0±47.5秒に較べ,良好な止血効果(p<0.005)がみられた.この成績に基づき,顕出血を呈した胃潰瘍13例,十二指腸潰瘍2例,吻合部潰瘍,食道静脈瘤,Malloryweiss症候群の各1例,計18例に緊急内視鏡を行い,最初の2病日は胃生検時と同様の撒布とリン酸緩衝液に溶解したトロンビン2万単位を8時間ごと2回経口投与し,第3病日に同量の経口投与のみを8時間ごと3回行った.効果判定は第4病日に内視鏡を行い,新鮮出血のないものを有効とした. 有効は18例中15例,83.3%で,その後の治療期間中にも再出血のなかった永久止血例は13例,72.2%であった.以上より,本法は上部消化管出血に有用な止血法と考えられた.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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