抄録
大腸リンパ管腫は極めてまれな大腸非上皮性良性腫瘍である.本症は術前に正確に診断される事は少なく報告例のほとんどはポリープ,粘膜下腫瘍等の診断のもとに切除手術を受けている.しかし近年,大腸内視鏡の発達により術前に本症を正確に診断する事も可能となった.今回,筆者らは注腸X線造影および大腸内視鏡検査により術前に嚢腫と診断し切除した横行結腸リンパ管腫の1例を経験したので報告する.症例は36歳の女性で下痢を主訴として来院.注腸X線造影で横行結腸に拇指頭大半球状表面平滑な陰影欠損を認めた.大腸内視鏡検査ではこの病変は中央がやや陥凹し光の透過性が良く波動を有するcysticな隆起であり被覆粘膜は正常粘膜であった.この所見より嚢腫と診断した.切除された嚢腫は2.0×2.0×1.5cmの大きさで多房性で無色透明漿液性の内容液を含み内壁は一層の扁平な内皮細胞で被われていた.これらの所見よりリンパ管腫と考えられた.