抄録
症例は48歳,男.約10年前より胃ポリープ指摘され,昭和56年5月当科入院.胃穹窿部後壁にみられた有茎性の単発性ポリープで,Congo red testでは,C-1typeであり,ポリープも一部黒変した.内視鏡的ポリプペクトミー施行,摘出したポリープは,頭部13×11×9mm,断端径3×2mmであり,組織学的には,嚢胞状に拡張した胃底腺が主体をなし,hamartomatous polypの範擣に入るものと考えられた。 本ポリープについて,酵素抗体法間接法を用いて,内分泌細胞の動態につき検討した.その結果,D細胞の過形成像とGlucagon含有細胞,Glicentin含有細胞の出現を認め,更に,好銀細胞,銀親和細胞を多数認めた.Glucagon含有細胞の出現は,本ポリープが,胎児期の粘膜の形質の遺残あるいは再現したものである可能性が示唆された. これら内分泌細胞の組織化学的検討は,いわば細胞動態の乱れた状態にあると言えるポリープにおいて,その動態をあらわす指標になりうると共に,ポリープの発生に関しても,何らかの示唆を与えるものと期待される。