日本消化器内視鏡学会雑誌
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胃癌患者における胃血行動態
宮本 二郎
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1982 年 24 巻 2 号 p. 193-203

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抄録
胃癌の血管像は正常像と異なり,胃癌特有の血管構築を有している.そのため腫瘍内血流動態の微小循環学的把握は,胃癌対策上,重要な基礎的課題である.今回は胃癌患者67例を対象にし,胃癌周辺正常粘膜部,胃癌辺縁部,および胃癌中心部の血流量を内視鏡的水素クリアランス式組織血流測定法を用いてそれぞれ測定した.そして以下の結論を得た.(1)進行胃癌においては,周辺正常部より癌周堤部血流量の方が多く,また癌周堤部に比べ潰瘍部の血流は有意に低値を示した.(2)進行癌ではBorrmann1型,2型の方が,3型,4型より癌周堤部血流量は多い傾向にあった.(3)進行癌の組織型を分化型癌,未分化型癌,粘液細胞型癌に分けると,分化型癌の方が他ご者より癌部血流量は多い傾向があった.(4)早期癌においては癌辺縁部,中心部で血流値に大きな差はみられなかったが,周辺正常部に比べると癌部の血流の方が多い傾向は認められた.特にI型,IIa型早期癌では周辺正常部に比べ有意に癌部の血流は多かった.(5)早期癌の組織型別検討では,血流値にはっきりした傾向は認められなかった.(6)癌患者の年齢,癌の存在部位による血流値の差は見いだされなかった.
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