抄録
大腸結核と大腸癌が合併することは極めて稀で,本邦において8例の報告があるにすぎない.自験例は69歳女性で左頸部リンパ節腫大を認め,生検の結果は腺癌であった.原発巣の検索のために消化管検査を行った結果,注腸検査にて右半結腸に腸結核の瘢痕像がみられ,また肝彎曲部には不整形の陥凹を伴う狭窄を認めた.大腸内視鏡検査にて同部位に易出血性の潰瘍病変があり,生検結果は腺癌であった.切除標本,組織学的所見は2型の大腸癌であった.周辺粘膜は潰瘍瘢痕に伴う粘膜萎縮帯がみられ,活動性の潰瘍や結核結節はみられなかったが大腸結核の瘢痕と診断した.なお瘢痕萎縮帯内に癌が合併していたがその因果関係は不明である.