抄録
気管支喘息発作の治療中に発症した,潰瘍性大腸炎の症例を報告する. 17歳,男子,気管支喘息発作治療後のステロイド漸減中,便潜血が徐々に陽性化し,腹部自覚症状はなかったが,下部消化管造影検査でthumbprinting signを認めた.その1週間後に腹痛と粘血便があらわれ,さらにその1週間後には注腸造影で棘状の多発潰瘍像と高度の粘膜腫脹が,上~下行結腸にみられた.大腸ファイバースコープではS状結腸より口側の粘膜に易出血性の粘膜と多数の潰瘍を認め,生検にて陰窩膿瘍が発見された. 以上の経過から,気管支喘息発作またはステロイド漸減が発症の誘因となった可能性がつよい潰瘍性大腸炎の1例の発症過程を報告する.