抄録
肝血管腫により胃穹窿部に著明な圧迫を来し,X線的,内視鏡的に胃粘膜下腫瘍が疑われた1例を報告した.症例は49歳男性で,集団検診の間接X線像にて胃穹窿部に異常像を認めたため精査を行い,胃粘膜下腫瘍力疑われたが,人工気腹後の胃X線検査で胃外性の圧迫であることが明らかとなった.手術の結果,肝左葉から用外性に限局的に発育した肝血管腫であることが判明した.胃穹窿部においては,胃粘膜下腫瘤の圧迫に基づく隨起との鑑別がしばしば非常に困難であり,両者の鑑別上の問題点を述べ,診断の一補助手段として,人工気腹蓚の胃X線検査が有用なことを強調した.さらに,肝海綿状血管腫について若干の文献的考察を加えた.