抄録
成人の巨細胞封入体症は稀であるが重症疾患の感染症として注目されている.今回,Lennertリンパ腫患者に認められた胃の巨細胞封入体症の一例を経験したので報告した.症例は47歳男性,主訴,発熱,理学的に全身リンパ節腫大,肝腫大を認め,リンパ節生検にてnon-Hodgkinリンパ腫と診断した.臨床経過中に消化管の精査施行.胃X線検査にて体部大彎側に陥凹性病変を認め,胃内視鏡検査で体部大彎側に8個の白苔を有する境界明瞭な潰瘍を認め,生検では悪性所見を認めなかった.内科的治療により潰瘍は不変であった.第107病日に死亡.剖検にてLennertリンパ腫と診断した.胃にはUl-IIIの潰瘍を8個認め,組織診断で潰瘍部の小血管内皮,腺管上皮,神経叢に多数の巨細胞封入体を認めた.本例の潰瘍は治癒機転に乏しい事,形態学的に特異な事より巨細胞封入体により発生した潰瘍と考えた.過去の報告例について文献的考察を加えて報告した.