1983 年 25 巻 11 号 p. 1710-1713_1
症例は53歳,女性.昭和55年多関節痛をきたし,全身性エリテマトーデスと診断された.副腎皮質ステロイド剤にて治療開始したところ,胃潰瘍を併発した.抗潰瘍剤の投与により潰瘍の経過は良好で,5カ月後の内視鏡検査にて治癒が確認された.しかし,その後の胃X線検査による経過観察で,胃潰瘍と胃・十二指腸瘻が認められた.内視鏡検査にて,幽門小彎側に潰瘍を伴った副幽門を認めた.副幽門の十二指腸球部への開通は,本来の幽門より挿入した洗浄用チューブを副幽門を通して十二指腸球部内に観察することにより証明した.胃潰瘍に続発した重複幽門(double pylorus)の形成と考えられ,本例の成因について,副腎皮質ステロイド剤との関連を論じ,あわせて重複幽門の成因に関して若干の考察を加えた.