1983 年 25 巻 3 号 p. 482-489
家族歴を有するウィルソン病の1例を報告する.症例は11歳女性.急性肝炎様の症状で発病し入院となった.血清銅代謝異常,Kayser-Fleischer角膜輪の存在等から本症と診断した.D-ペニシラミンの内服開始とともに尿中への銅排泄は著増し,1年間にわたる治療後には,臨床的にも,肝機能上もほとんど正常化した. 治療前と1年後の2回の腹腔鏡検査では,形態的にも肝表面像の改善が認められた. ウィルソン病では,治療効果の判定の手段として,腹腔鏡検査を行ない肝表面像の改善を確認することが有意義であると考える.