日本消化器内視鏡学会雑誌
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胃体部スキルスの原発巣に関する病理形態学的検討
岡村 正造中澤 三郎川口 新平芳野 純治小沢 洋岩田 雅人岡田 正典清水 豊松井 俊治
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1983 年 25 巻 5 号 p. 703-710_1

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抄録

 胃体部スキルスの初期像の特徴とその後の進展過程を追求するために,癌の浸潤範囲が切除胃で半周程度に限局し早期のスキルスの原発巣の特徴を具備していると考えられる5例を対象に選んだ.これら5例につき特に術前に得られた胃X線写真を重視すると共に切除胃固定標本,病理組織標本を用いて原発巣の病理・形態学的検討を試みた. 原発巣は5例とも径が2cm以下と小さく,棘状突起を有する角ばった不整形で,1例はIIc型早期癌類似の陥凹面を呈し,他4例はIII あるいはIII+IIc型早期癌に類する陥凹であった.組織学的にはUI IIの浅い陥凹であったが周囲粘膜が肥厚した胃底腺上皮であることから明らかな陥凹としてとらえられた.また皺襞集中の有無に関しては,3例が皺襞集中を認めず,2例は集中像を示す皺襞もあるが同時に原発巣に接しながら集中像を示さない皺襞がみられた. これらの原発巣が示す特徴は,スキルスの初期像を追求する上で重要な所見であり,臨床的にもスキルスの早期診断に寄与するものと考えられる.

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