1983 年 25 巻 8 号 p. 1178-1187
胃液の免疫学的およびムコ物質の研究は従来より胃ゾンデ法によって行われて来た.そのため,唾液,十二指腸液の混入,精神的胃液分泌の影響は無視出来なかった.これらの影響をさけるため,著者は局所麻酔,静脈麻酔,抗コリン剤,内視鏡による嚥下経路内腔の充満等の処置を行なった上で,空腹時胃液を吸引,胃壁に附着している泡沫状粘液を大量の水で洗浄し吸引排除した.しかる後に胃壁を37℃ の水120mlで水圧をかけて再び洗い,大彎に貯溜した粘液を採取した.これらの操作と同時に通常内視鏡観察を行ない,その後色素内視鏡生検を行なった.採取した粘液は3等分し,1部は凍結乾燥保存し,他は免疫電気泳動,ムコ物質泳動に供した.第1報では,体位,嚥下抑剤,採取した粘液の泳動前処置について検討した.