症例は46歳女性である.胃集検で異常を指摘され胃X線及び内視鏡検査の結果,胃角部のIIc型早期胃癌,前庭部には中心陥凹を有する粘膜下腫瘍と診断された.この2つの病変に連続性はなかった.病理学的検索で胃角病変は4.5×4.5cmの管状腺癌(tub2,sm),前庭部粘膜下腫瘍は3.7×3.1×2.3cm,HE染色を含めた従来の染色及びS100染色で神経性腫瘍の特徴を示し,固有筋層へ浸潤性に増殖し,神経肉腫と診断できた.更に肉腫表面粘膜には中心陥凹に連続して0.9×0.5cmのIIc様所見がみられ一部肉腫内に浸潤した管状腺癌(tub1,pm)であった.2個の腺癌には連続性がなく,組織分化度も異なりリンパ管侵襲も認められなかった. 胃に発生母地の異なった悪性腫瘍が共存することは極めて稀であり,神経肉腫と多発癌の共存例はいまだ報告をみない.われわれは極めて稀な症例を経験し報告した.