日本消化器内視鏡学会雑誌
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早期胃癌の臨床病理学的検討―内視鏡的治療の適応を知るために―
池田 由弘平尾 雅紀長谷 良志男杉原 保高橋 康幸奥山 敬松浦 侯夫仲 紘嗣
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1984 年 26 巻 10 号 p. 1655-1661

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抄録
 近年,早期胃癌に対し種々の内視鏡的治療が行われている.しかし,その多くは外科的切除不能例や拒否例に限って行われているのが現状である.今回われわれは,早期胃癌の内視鏡的治療の最も望ましい適応を知るために,本症の外科的切除例の臨床病理学的検索をした.対象は当院で経験した早期胃癌切除例278例のうち多発早期胃癌,同時性重複癌を除く単発例で,かつ病巣の構築およびリンパ節検索をなしえた179例とした.今回は,この179例について肉眼型,深達度,組織型,病巣の大きさ,主病巣内消化性潰瘍(以下Ulと略す)の有無,Ulの大きさ,Ulの深さとリンパ節転移の関係について検索した.その結果,1.m癌Ul(-)群では45例中全例がリンパ節転移を認めなかった.2.高分化型のm癌では58例中全例がリンパ節転移を認めなかった.3.m癌においては肉眼型,病巣の大きさ,Ulの深さおよび大きさとリンパ節転移率との間には相関はみられなかった.以上の結果により,高分化型でUl(-)のm癌が内視鏡的治療の最も望ましい適応と考えられた.ただし,この条件のもとで内視鏡的治療を積極的に行う場合には,病理学的検索の可能な内視鏡的切除が望ましい.sm癌,断端(+)例,Ul(+)例と判明したものについては,リンパ節郭清を伴う手術を追加すべきである.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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