1984 年 26 巻 10 号 p. 1752-1760_2
無症候例を含む肝型Wilson病の姉妹例を報告した. 症例1:14歳,女性.続発性無月経と肝不全で発症.Kayser-Fleischer輪,血清銅低値,低セルロプラスミン血症,尿中銅排泄量著増を認めた.臨床病期はDeissらのstageIIB,DobynsらのstageIIBI.肝性昏睡で死亡し,剖検肝は特異な肝硬変であった.AndersonとPopperの組織学的病期はactive stageで,肝組織内銅含有量は623μg/g dry weightを示した. 症例2:12歳,女性.症例1の妹.症例1の家族調査で発見されたもので,無症状であった.Kayser-Fleischer輪はなく,血清銅低値,低セルロプラスミン血症,尿中銅排泄量増加を認めた.臨床病期はDeissらのstageI, Dobynsらのstage I~IIA.腹腔鏡で観察すると,肝にはi)表面平滑,ii)脂肪肝を反映する黄赤褐色調,iii)軽度の線維化を示唆する直径1mm大の区取り,の所見がみられた.AndersonとPopperの組織学的病期はprecirrhotic stageで,肝組織内銅含有量は1235μg/g dry weightを示した.本例はD-penicillamine療法で肝機能検査成績の改善を認めた.