日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
食道静脈瘤に対する内視鏡的塞栓療法の検討
朱 明義岡本 英三柏谷 充克余田 洋右
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 26 巻 3 号 p. 381-391

詳細
抄録

 食道静脈瘤に対する内視鏡を用いた治療は,40年余の歴史を持つにもかかわらず,未だ確立した治療とはなり得ていないのが現状である.教室では1980年より,緊急症例及び高度肝障害などの理由による手術不能の待期及び予防症例151例に対して内視鏡的塞栓療法を施行し,その成績を検討し,報告した. 緊急症例では,87.3%に止血効果を認め,最長止血効果持続例は1年10カ月であった.待期及び予防症例では,内視鏡的経過観察を行ない,本法施行後,形態の変化,R-C signの変化,血栓形成,潰瘍形成など,顕著な静脈瘤の変化を認めた.しかし,長期経過例では,施行後早期に比し,種々の静脈瘤の変化があり,今後の検討を要すると考えられた.9例に対する経皮経肝的門脈圧測定では,本法施行後平均6.4cmH2Oの圧上昇を認め,門脈造影では,食道静脈瘤以外の側副血行路の発達を促進する傾向を認めた. 本法の合併症としては,緊急症例で血液誤嚥による肺合併症を1例,待期及び予防症例で穿刺部からの後出血を6例に認めたが,他に重篤な合併症はなかった. 以上から,本治療法は,その手技が簡単,かつ安全で,食道静脈瘤破裂に対する止血効果は極めて優れており,今後,長期経過例の検討によっては,出血予防の対策としても充分期待されるべき方法であると考えられた.

著者関連情報
© 社団法人日本消化器内視鏡学会
前の記事 次の記事
feedback
Top