日本消化器内視鏡学会雑誌
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小児消化管疾患における内視鏡検査の意義
芦田 潔木津 稔高田 洋高田 洋
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1984 年 26 巻 3 号 p. 393-396_1

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抄録

 従来,内視鏡による検査,治療法は主に成人を対象として実施されてきたが,最近,小児の領域においてもこれを積極的に消化器病の診断,治療法に応用する傾向にある。著者らは33例の小児にのべ66回の上部消化管内視鏡検査を行なった.本論文では安全性を含めて小児科診療における本法の有用性について報告した.対象年齢は15歳以下の小児で,最年少児は1歳6カ月の男児であった.内視鏡前処置は原則として3歳以下の症例に対しては全身麻酔を行ない、4歳以上では成人と同様の前処置を行なった.使用器種はすべての症例で成人用の細径ファイバースコープを使用し、全例に安全に検査を施行しえた.検討33症例の主症状は腹痛が11例と最も多く,次いで貧血,吐下血,異物誤嚥の順であった.これら33例中何らかの上部消化管の異常所見を認めたものは20例(61%)であった.一方,消化性潰瘍は腹痛例11例中4例,貧血9例中3例,吐下血6例中2例にみられた.これは腹痛,貧血,吐下血を訴えて内視鏡検査が施行された26例中9例(35%)に認められた.また,胃のびらん性病変は腹痛,貧血および吐下血例で各々2例ずつ認められた.以上より,吐下血,異物誤嚥などの顕著な消化器症状を有する症例のみでなく,貧血や単に腹痛のみを訴える小児でも上部消化管病変が高頻度に存在する可能性が示唆された.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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