日本消化器内視鏡学会雑誌
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26 巻, 3 号
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  • 倉 禎二
    1984 年 26 巻 3 号 p. 353-369
    発行日: 1984/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃に限局性病変のない122例を対象とし,胃内圧はテレメーター法により,胃血流量は133Xeおよび水素クリアランス法により,内視鏡直視下に測定した。テレメーター法により大気圧Ocm H2Oを基準とした絶対値で胃内圧を測定し得たため,残留胃内圧も正確に把握できた。その平均値は8.6cm H2O(n=30)で,加齢に従いやや減少する傾向を認めた.最大胃内圧の平均値は約25cm H2Oであり,内視鏡検査時の至適胃内圧は15~20cm H2Oであった.この至適胃内圧下に測定した胃体下部小彎側の血流量の平均は133Xeクリアランス法63.3ml/min/100g(n=38),水素クリアランス法65.0ml/min/100g(n=30)で,両者は近似していた.同部の血流量は加齢に伴い減少し,また胃内圧上昇によっても減少した.これらの成績と萎縮性胃炎との関連性を検討すると,萎縮性胃炎と残留胃内圧との間に軽い負の相関がみられ,萎縮性胃炎と胃体下部小彎側の血流との間に強い負の相関が認められた.
  • 松谷 富美夫
    1984 年 26 巻 3 号 p. 370-379
    発行日: 1984/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     当科において施行した内視鏡的大腸ポリペクトミーは,過去4年間に82病変であった.このうち腺腫74病変を武藤・Morsonの異型度分類を用い病理組織学的に検討し,同時にHigh iron diamine-Alcian blue pH2.5(HID-AB)染色を用い,異型度別に腺腫の杯細胞粘液変化を検討した.74病変中,早期大腸癌と診断されたものは17病変(23%)であった.17病変中粘膜内癌(m癌)は15病変,粘膜下浸潤癌(sm癌)は2病変であった.早期大腸癌の多くはS状結腸にみられた.早期大腸癌の大きさと形態は17病変中16病変が10mm以上で10mm以下は1病変であった.m癌については10~20mm台の亜有茎性のものが多く,sm癌2病変はいずれも20mm以上で亜有茎性であった.腺腫の異型度別杯細胞粘液変化は,異型度が増すにつれて杯細胞粘液はsialomucin優位の傾向にあった.このことは大腸腺腫の癌化に関連した変化の一つと推測された.
  • 朱 明義, 岡本 英三, 柏谷 充克, 余田 洋右
    1984 年 26 巻 3 号 p. 381-391
    発行日: 1984/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道静脈瘤に対する内視鏡を用いた治療は,40年余の歴史を持つにもかかわらず,未だ確立した治療とはなり得ていないのが現状である.教室では1980年より,緊急症例及び高度肝障害などの理由による手術不能の待期及び予防症例151例に対して内視鏡的塞栓療法を施行し,その成績を検討し,報告した. 緊急症例では,87.3%に止血効果を認め,最長止血効果持続例は1年10カ月であった.待期及び予防症例では,内視鏡的経過観察を行ない,本法施行後,形態の変化,R-C signの変化,血栓形成,潰瘍形成など,顕著な静脈瘤の変化を認めた.しかし,長期経過例では,施行後早期に比し,種々の静脈瘤の変化があり,今後の検討を要すると考えられた.9例に対する経皮経肝的門脈圧測定では,本法施行後平均6.4cmH2Oの圧上昇を認め,門脈造影では,食道静脈瘤以外の側副血行路の発達を促進する傾向を認めた. 本法の合併症としては,緊急症例で血液誤嚥による肺合併症を1例,待期及び予防症例で穿刺部からの後出血を6例に認めたが,他に重篤な合併症はなかった. 以上から,本治療法は,その手技が簡単,かつ安全で,食道静脈瘤破裂に対する止血効果は極めて優れており,今後,長期経過例の検討によっては,出血予防の対策としても充分期待されるべき方法であると考えられた.
  • 芦田 潔, 木津 稔, 高田 洋, 高田 洋
    1984 年 26 巻 3 号 p. 393-396_1
    発行日: 1984/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     従来,内視鏡による検査,治療法は主に成人を対象として実施されてきたが,最近,小児の領域においてもこれを積極的に消化器病の診断,治療法に応用する傾向にある。著者らは33例の小児にのべ66回の上部消化管内視鏡検査を行なった.本論文では安全性を含めて小児科診療における本法の有用性について報告した.対象年齢は15歳以下の小児で,最年少児は1歳6カ月の男児であった.内視鏡前処置は原則として3歳以下の症例に対しては全身麻酔を行ない、4歳以上では成人と同様の前処置を行なった.使用器種はすべての症例で成人用の細径ファイバースコープを使用し、全例に安全に検査を施行しえた.検討33症例の主症状は腹痛が11例と最も多く,次いで貧血,吐下血,異物誤嚥の順であった.これら33例中何らかの上部消化管の異常所見を認めたものは20例(61%)であった.一方,消化性潰瘍は腹痛例11例中4例,貧血9例中3例,吐下血6例中2例にみられた.これは腹痛,貧血,吐下血を訴えて内視鏡検査が施行された26例中9例(35%)に認められた.また,胃のびらん性病変は腹痛,貧血および吐下血例で各々2例ずつ認められた.以上より,吐下血,異物誤嚥などの顕著な消化器症状を有する症例のみでなく,貧血や単に腹痛のみを訴える小児でも上部消化管病変が高頻度に存在する可能性が示唆された.
  • 粒良 邦彦, 星原 芳雄, 森藤 忠夫, 吉田 健三, 宮本 昭正
    1984 年 26 巻 3 号 p. 397-407
    発行日: 1984/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     ステロイド胃潰瘍,薬剤性胃潰瘍,膠原病に合併する胃潰瘍については,それぞれ数多くの研究があるが,ステロイドを含む抗炎症剤の投与中に見られる胃潰瘍の存在部位については諸説あり,その胃潰瘍と腺境界の関係については未だ明らかでない.また,ステロイドと併用されている他の抗炎症剤の影響ではないか,との疑義も解明されていない. われわれは,膠原病及びその類似疾患に対して,ステロイド剤または非ステロイド系抗炎症剤を投与中に内視鏡で確認された上部消化管潰瘍56例を,通常の上部消化管潰瘍516例と比較して以下の知見を得た.(1)ステロイド単独投与群,非ステロイド系抗炎症剤単独投与群,両者併用群の三群共に幽門前部(前庭部幽門側)に潰瘍を有する例が著しく多い.(それぞれ85.7%,72.7%,86.8%)(2)抗炎症剤投与中幽門前部に認められた胃潰瘍は,内視鏡的コンゴーレッド法で認められた酸分泌境界から十分に離れている.
  • 浅木 茂, 西村 敏明, 佐藤 彰, 佐藤 勝久, 大原 秀一, 渋谷 大助, 佐藤 寛, 荻津 之博, 後藤 由夫
    1984 年 26 巻 3 号 p. 408-413
    発行日: 1984/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     粘膜下腫瘍の生検法として,安全で確実に腫瘍組織が採取できる方法として,純エタノールを局注し腫瘍の表面に潰瘍を作成した.数日後にこの潰瘍底に露出した腫瘍を鉗子を用いて生検した.これまで臨床例で12例に本法を行ない,計20回100個の生検標本中64個(64%)で良好な腫瘍組織が得られ,全例術前に病理組織診断が得られた.
  • 吉田 智治, 河原 清博, 宮崎 誠司, 平田 牧三, 村田 誠, 門 祐二, 沖田 極, 岡崎 幸紀, 竹本 忠良
    1984 年 26 巻 3 号 p. 414-423
    発行日: 1984/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道癌および噴門部癌の手術適応外患者の癌性狭窄に対するplastic prosthesisによる内視鏡的治療法の有用性と安全性について基礎的検討を行なった. 雄家兎36頭の食道にVX2癌を内視鏡直視下に移植して癌性狭窄を作製し,%周性以上の狭窄をきたした時点でplastic tubeを挿入した11頭(tube(+)群)と,plastictubeを挿入しなかった10頭(tube(-)群)とで,その食餌摂取量,体重の変化,生存日数を対比した. tube(+)群の方が,tube(-)群より,食餌摂取量は多く,両群の間に1%以下の危険率で有意差を認めた.体重の変化,生存日数では,両群の間に有意差は認められなかった.また,plastic tubeによって,食道破裂(9.1%),圧迫壊死(18.2%),tubeの内腔閉塞(9.1%),tubeの移動(18.2%)等の合併症が認められた. 以上より,癌性狭窄に対するplastic prosthesisによる内視鏡的治療法は,合併症の克服という課題はあるが,物を食べる歓びと,社会生活を患者に与えることができると考えられた.
  • 佐藤 和一, 小松 寛治, 盛合 範彦, 中目 千之, 佐々木 雅佳, 花田 稔
    1984 年 26 巻 3 号 p. 424-432_1
    発行日: 1984/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     上部消化管出血38例に対し,YAGレーザー止血法,純エタノール局注止血法,マイクロ波止血法の3種類の方法で,内視鏡的止血法を試みた.38例中30例は,初回単独にて永久止血に成功し,残り8例は2種類の止血法を併用することにより,永久止血に成功,最終的には全例永久止血に成功した.初回単独止血有効率はYAGレーザー83%,純エタノール局注止血法86%,マイクロ波止血法100%であった.各内視鏡的止血法を,出血重症例,出血管別に検討してみると,出血程度が軽症群,中等症群では3者とも良好な成績を示したが,重症群では,動脈性出血に関しては純エタノール局注止血法,マイクロ波止血法が,複数の静脈性出血,広範囲の毛細血管性出血に関しては,YAGレーザー止血法が,それぞれ有効であった.
  • 関谷 千尋, 長谷部 千登美, 佐藤 仁志, 高橋 篤, 矢崎 康幸, 並木 正義
    1984 年 26 巻 3 号 p. 433-439
    発行日: 1984/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     肝疾患の診断,病態の的確な把握に腹腔鏡検査は欠かすことのできないものとなっている.しかし,腹腔鏡検査は多くの人が集まって,同時に検討したり,多数の専門家を養成するには何かと困難がある.そのような問題を克服するには内視鏡テレビシステムの開発が望まれる.今回,われわれは腹腔鏡検査にも使用し得る超軽微で超小型のカラーテレビシステムSK-1057(新光興器製)について検討した.SK-1057の操作性は非常によく,町田製のRJ-500を用いると腹腔内観察に十分な光量が得られ肝表面像の微細な変化を判読するのに十分な解像力や色調を得ることができた.また,新人教育や術者の養成に要する時間を短縮することができた.SK-1057は動的観察のみならず教育的観点からも極めて意義あるものと考え報告した.
  • 岩越 一彦, 平田 一郎, 浅田 修二, 岡 博行, 白木 正裕, 三好 博文, 島本 史夫, 鄭 鳳鉉, 折野 真哉, 正宗 研, 大柴 ...
    1984 年 26 巻 3 号 p. 440-446_1
    発行日: 1984/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     虚血性大腸炎12例を対象に注腸X線所見,大腸内視鏡所見の特徴を中心に臨床的検討を行った. 1.好発部位は下行結腸,S状結腸であった.年齢は高齢者に多い傾向があった. 2.Marstonの分類に従うと,stricture typeが最も多く,次いでtransient typeであり,gangrenous typeは1例もみられなかった. 3.注腸所見は急性期にthumb printingが,経過中にsacculationがみられることが特徴であった. 4.大腸内視鏡所見は全例に病変部粘膜の発赤と多くの症例に線状潰瘍がみられた.これらの所見をうるためには発症後早期に大腸内視鏡検査を施行することが必要であった.
  • 若林 泰文, 村山 久夫, 小島 豊雄, 味方 正俊, 鈴木 邦夫, 渡辺 裕, 立川 信三, 田中 三千雄, 藤倉 信一郎, 佐々木 博
    1984 年 26 巻 3 号 p. 447-462_1
    発行日: 1984/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     患者は79歳男性.心窩部痛とコーヒー残渣様嘔吐を主訴に来院した.上部消化管内視鏡ならびにX線検査にて,十二指腸下行部に山田IV型の腫瘤性病変が発見された.拡大および色素(methylene blue,以下M.B.)内視鏡検査で腫瘤頭部は,(1)絨毛間隙の狭小化,絨毛丈の低下,絨毛先端の凹凸不整を認め,M.B.に不染である部位(Ca部),(2)絨毛巾が著しく太く,絨毛間隙は明瞭で,M.B.に良染する部位(Ad部),の2つの部位から成ることが観察された.摘出標本に施されたalkaline phosphatase(以下ALP)染色および実体顕微鏡観察において,(1)Ca部ではALP活性が消失し,絨毛の変性・萎縮状態にあり,(2)Ad部はALP活性陽性で,絨毛巾の粗大化を呈した.病理組織学的にCa部は高分化腺癌,Ad部は腺腫であることが判明し,拡大内視鏡,色素内視鏡,ALP染色,実体顕微鏡所見で認められた両者の相異は,同部粘膜吸収上皮細胞における“異型性の程度の違い”に基づくものと考えられた. 本例は,早期十二指腸癌の内視鏡診断のうえで,色素染色法併用拡大内視鏡検査法がきわめて重要であることを示唆しているものといえる.
  • 前田 淳, 中井 呈子, 川村 雅枝, 赤上 晃, 勝 健一, 上地 六男, 山下 克子, 横山 泉, 立花 正史, 秋本 伸, 長廻 紘, ...
    1984 年 26 巻 3 号 p. 465-469_1
    発行日: 1984/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     東京女子医大成人医学センターの成人病予防定期検診にて発見された類似IIb(IIa)型の早期大腸癌の1例について報告する. 症例は64歳の男性である.検診時の検査所見に異常はなく,便潜血反応も陰性であった.既応歴に人間ドックでS状結腸ポリープの疑いを指摘されていたため大腸X線検査を施行したところ上行結腸に多数の憩室がみられたが直腸には異常が認められなかった.大腸内視鏡検査では直腸に扁平なわずかに隆起した表面凹凸を呈する病変が認められ,生検組織像は高分化型腺癌であった.切除標本では病巣は1.2×1.0cmの大きさで腺腫を伴わない深達度mの類似IIb(IIa)型の早期大腸癌であった.本症例は腺腫を伴っておらず,大腸癌の組織発生の面からもきわめて興味ある症例と思われる.また,早期大腸癌の発見における大腸内視鏡検査の有用性についても強調した.
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