1984 年 26 巻 5 号 p. 678-682_1
ICG色素の大量静注により,肝を緑色に着色せしめ,非着色部とのコントラストからその診断能を向上せしめようとする,新しい色素腹腔鏡検査法について報告した.ICG色素の投与量は2mg/kgと4mg/kgの両者について検討したが,いずれも色素投与5分後から40分頃まで観察に適した肝の着色状態が続いた.着色を受ける部位は肝細胞の存在する肝実質領域が主体であり,間質結合織,脈管,リンパ小水泡,脂肪組織および肝細胞癌組織への色素の移行は,ほとんどなかった.また肝細胞の集合壊死巣であるとされる赤色紋理(code No.4)への色素の移行はなく,肝細胞の再生部とされるKalkの斑紋(code No.7),再生結節(code No.8)には過剰の色素の集合が認められた.これらのことから本検査法は,肝表面像の解析能を向上するのみでなく,色素排泄能から肝疾患の局所的病態生理面への解明に利用しうるものと思われる.