1984 年 26 巻 5 号 p. 685-691
腹腔鏡検査の目的は,肝表面の性状の観察により肝臓の病態や進展課程を理解することにある.したがって,肝表面の微細な所見を観察する必要性が生じる.そこで筆者らは肝細胞に摂取される緑色色素であるIndocyan-ine Green(ICG)を投与することにより,小葉紋理が緑色班としてみられることを期待して,ICGを投与し腹腔鏡検査を施行した.方法はICG 100mgを20mlに溶解し静注15分後,さらに100mg追加投与の15分後に投与前,後のそれぞれの記録写真を撮影した.ICGの投与により,肝表在血管,リンパ管の観察が容易となり,特に前者は記録写真で明瞭となった.肝小葉紋理が緑色に染り,また白色紋理も明瞭に観察しえた.結節肝では結節部が濃染され肝細胞の機能状態を推定できるものと思われる.脂肪化の著明な部位ではICGの摂取が不良であった.以上の成績より,ICG投与下で腹腔鏡を施行することは肝臓の病態を理解する際に有用である.