抄録
Inflammatory Fibroid Polyp(IFP)は胃には比較的高い頻度でみられるが,大腸に発生した例は極めて稀であり,過去に本邦では4例の報告がなされているにすぎない.私達は下腹部痛を主訴として来院した32歳男性の盲腸に発生した本症例を経験したので報告した. 臨床検査成績として赤沈亢進,白血球増多,CRP1+であったが,好酸球増多は認められなかった.X線,内視鏡検査により盲腸に太い茎を有する35×25×25mmの腫瘤を確認でき,その表面は顆粒状に凹凸不整であり,一部にビランもみられた.病理組織学的に腫瘤は層状,渦状の線維性増殖と豊富な毛細血管と好酸球を主体とするビ慢性炎症細胞浸潤よりなりIFPと確定診断を下した. そのX線,内視鏡検査所見は本症の病像として特徴的と考えられ,他疾患と術前に鑑別を行なう上で一つの指標になるものと思われる.