日本消化器内視鏡学会雑誌
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終末回腸のPeyer板に関する研究(第1報)内視鏡検査例および剖検例における粘膜表面形態および組織学的検討
藤倉 信一郎
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1984 年 26 巻 8 号 p. 1246-1261

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抄録
 内視鏡検査例100例と剖検例48例を対象にして,正常の終末回腸におけるPeyer板の内視鏡像,肉眼・実体顕微鏡像および組織像を対比検討した.その結果,Peyer板は内視鏡的には3つの型に,肉眼・実体顕微鏡的および組織学的には2つの型に分類された.すなわち内視鏡像が顆粒状あるいは脳回状隆起を呈するPeyer板は,剖検例においての肉眼・実体顕微鏡像が顆粒状あるいは脳回状隆起を呈するPeyer板と同一であり,その組織像は境界鮮明なリンパ濾胞が集合し,粘膜表面を覆う絨毛が少なかった〔「リンパ濾胞型(Lymph Follicle Type,LF型)」と命名〕.また内視鏡像がほほ'平担なPeyer板は,剖検例においての肉眼観察では周辺粘膜との識別困難なあるいはKerckring皺襞の消失部位としてかろうじて識別されるPeyer板と同一であり,その組織像は境界不鮮明なリンパ濾胞あるいはリンパ系細胞・細網細胞・繊維組織が集合し,粘膜表面のほとんどが絨毛で覆われていた〔「リンパ球集簇型(Lymphocyte Aggregation Type,LA型)」と命名〕.その他内視鏡像が上記2つの型の中間の形態をとる,すなわち表面が顆粒状に小さく凹凸しているが全体としてはほぼ平担なPeyer板〔内視鏡的に「境界型(Border Type,B型)」と命名〕は,剖検例の肉眼・実体顕微鏡像あるいは組織像においては,LF型あるいはLA型のいずれかのグループに属しているものと考えられた. 剖検例においてLF型とLA型の2型のPeyer板を比較すると,その大きさには両型の間に有意差は無かったが,回盲弁からの距離はLF型の方が近かった.またPeyer板周辺の孤立性リンパ濾胞の分布密度はLF型に高かった.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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