日本消化器内視鏡学会雑誌
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食道静脈瘤の血管構築像および内視鏡像からみた発赤所見に関する研究
中村 洋三
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1985 年 27 巻 1 号 p. 17-25

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抄録

 食道静脈瘤剖検例9例と食道および胃に静脈瘤を認めなかった対照剖検例3例で食道の透明標本を作製し,血管構築像を立体的に観察した.さらに,食道静脈瘤内視鏡所見を血管構築像の観察より得られた所見と対比検討した.その結果,1. teleangiectasiaとRed wale markingは,ともに上皮下静脈に由来し,両者のあいだに移行像が観察された.2. Red wale marking(および一部のCherry red spot)として取り扱われている発赤所見には,1)柵状静脈の部分的拡張,2)柵状静脈より静脈瘤への移行部における短絡枝の拡張,3) 吻合枝の拡張,という少なくとも3つの異なる発生機序が認められた.3. teleangiectasiaには,1) 柵状静脈に連続する上皮下静脈の拡張,2) 棚状静脈に連続性がなく,穿通枝を介して静脈瘤に連続する上皮下静脈の拡張,の二種類がみられた.以上の結果より,teleangiectasiaは,静脈瘤破綻出血を予知する所見として発赤所見と同様の意義をもつと考えられた.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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