抄録
膵嚢胞とくに膵仮性嚢胞の自然経過が,最近の画像診断の進歩で明らかになるにつれて,本症の治療方針も変わりつつある.今回われわれは,本症の内科的治療の可能性を探るため,過去8年間に当科および関連施設で経験した膵嚢胞症例21例につき,手術例と非手術例の比較検討を行った.その結果,手術を施行しなくとも良好な経過を示す症例が,自然消失2例を含む約半数の9例にみられた.これらの症例の吟味から,膵嚢胞と診断した場合,1~2カ月の経過観察を行い,この時点で,悪性病変が否定でき,症状がなく,嚢胞の大きさが4cm未満で,縮小傾向があり,合併症のないものは,手術を施行せず経過を観察してもよいと考えられた.また,ERP上主膵管と交通の認められる嚢胞は,縮小する可能性が大であることも示唆され,治療方針を決定する上で参考になる所見と思われた.