抄録
症例は55歳男性,主訴は四肢の紫斑.典型的な臨床症状と検査所見よりアレルギー性肉芽腫性血管炎(AGA)と診断された.大腸内視鏡検査により,全結腸に不規則に多発する周辺発赤の強い潰瘍性病変を認め,生検組織像で,典型的肉芽腫は欠くものの好酸球浸潤の強い血管炎の所見が得られたため,AGAの消化管病変と診断した.経ロステロイド投与により,全身症状・検査所見は改善し,大腸潰瘍も完全に治癒した. 本邦におけるAGAの報告は,1984年までに自験例を含め54例見られた.消化管および心病変がその予後不良の因子として重要であると思われたが,消化管病変の記載のあった16例で,生前に内視鏡で診断されたものは4例にすぎなかった.AGAにおける消化管の潰瘍性病変は,小血管の閉塞による虚血が原因と考えられるが,その穿孔の頻度はPNに比し低く,病変の深さと罹患血管径との関連が示唆された.これらのことより,消化管内視鏡検査はAGAの診断および治療上の指標として重要であると考えられた.