抄録
患者は47歳,男性.海外渡航歴はない.昭和58年8月,テネスムス,血便を主訴に当科受診し,注腸造影検査で直腸辺縁にバリウムの付着性異常,S状結腸にいわゆるタコイボ状陰影の多発が認められた.大腸内視鏡検査では直腸より下行結腸下部に,周囲に軽い盛り上がり及び紅暈を有する黄色調の白苔の多発が観察された.また下行結腸脾彎曲部から横行結腸,上行結腸にかけ,孤立性のやや深堀れの潰瘍を数個認めたが,潰瘍周辺の粘膜はほぼ正常であった.白苔及び潰瘍辺縁より行なった生検組織中に赤痢アメーバ原虫を認め,アメーバ性大腸炎と確診した.