抄録
近年,本邦において大腸癌の増加が予測されることから,大腸癌早期診断のための集団検診体制の確立が望まれている.小集団の検診ではfiberscopeによる検診が可能であると考えられ,当院における1泊2日の人間ドックにおいてsigmoidofiberscopyeによるS状結腸検診を試みた.検査前日の夜に下剤を投与し,当日早朝に浣腸を行なってから検査を施行した.検査は無透視下,2人法で行なわれた.検査実施者はドック受診者708名中701名であった.観察部位はS状結腸中部までしか観察できなかったもの15名(2.1%),S-D移行部まで336例(47.9%),下行結腸まで147例(21.0%),脾彎曲部まで112例(16.0%),横行結腸まで62例(8.8%),肝彎曲部まで15例(2.1%),盲腸まで14例(2.0%)であった.検査時間は概ね5~10分であった.癌は2例に発見され,ともにS状結腸にみられ,深達度はmおよびsmであった.ポリープは73症例に94病変発見され,全体では701例中83例(11.8%)になんらかの病変が認められた.また過去7年間に当院で扱われた大腸癌137例中104例(75.9%)は直腸,S状結腸に認められ,S状結腸までの検診の重要性が考えられた.またtotal colonoscopyに比べてsigmoidofiberscopyeは容易な手技であり,かつ被験者の苦痛も少なく人間ドックのような小集団検診においては非常に有用な方法であると思われた.