抄録
症例は,57歳の男性.心窩部鈍痛を主訴とし来院,上部消化管検査にて下部食道右後壁に8×5mmの細長い隆起性病変を認め,上部消化管内視鏡検査にて門歯列より40cmの部位に山田III型隆起性病変を認めた.ルゴール染色にてポリープ様病変部には不染帯を認めず,粘膜下腫瘍と推定された.病理組織学的診断と治療を兼ねて,内視鏡的ポリペクトミーを施行した.病理組織学的には,軽度の扁平上皮層粘膜の肥厚と,粘膜下層にリンパ球を主体とする炎症性細胞浸潤を伴った食道腺過形成より成る病変を認めた.現在まで,本病変の様な病理組織所見を示す食道の隆起性病変の報告はなく,極めて稀な症例と考えられた.