抄録
食道乳頭腫は,稀な疾患とされているが,その2例を経験した.症例1は,67歳男性で,腹部膨満感を主訴として来院した.上部消化管X線検査では,中部食道に山田III型の隆起性病変がみられ,内視鏡検査では,上門歯列より35cmの食道右壁に7×5mm大の乳頭状隆起性病変を認めた.病巣の深さ,広がり及び形態を知る上で超音波内視鏡,電子スコープ検査は有用であった.ポリペクトミーを行ったが,大きさは7×2×8mmで扁平上皮乳頭腫であった.症例2は,71歳女性で,心窩部不快感を主訴として来院した.上部消化管X線検査では,食道下部に山田III型で縦長の隆起性病変がみられ,内視鏡検査では,EC junction直上右壁に15×5mm大の隆起性病変を認め,生検で扁平上皮乳頭腫と診断された.心疾患の既往があることなどよりレーザー照射を行ったが,ほぼ完全に消失した.今回,本邦における著者らの集計を含めその臨床像,成因,食道癌との関連性について検討したので報告したい.