日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
内視鏡的止血法を行なったExulceratio simplex(Dieulafoy潰瘍)の4例
原 久人柴田 好岡野 重幸鈴木 安名武藤 英二武田 章三神田 誠原田 一道水島 和雄岡村 毅與志上田 則行並木 正義
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 28 巻 2 号 p. 374-381

詳細
抄録
大量の消化管出血で搬送され,緊急内視鏡検査によりExulceratio simplex(Dieulafoy)と診断し,直ちに内視鏡的止血法を行なった4例について報告した.症例は全例男性で,症例1は54歳,症例2は77歳,症例3は51歳,症例4は77歳であった.主要症状は症例2がタール便,他はいずれも吐血であった.緊急内視鏡検査の結果,症例1は体下部後壁に,症例2は噴門直下後壁に,症例3は体上部後壁に,症例4は穹窿部大彎側にそれぞれ径2~3mmの微小な粘膜欠損部とその中央に1mm程度の露出血管を認め,Exulceratio simplex(Dieulafoy)の所見を呈していた.症例1に対しては,高張ナトリウムーエピネフリン(Hypertonicsaline epinephrine:HS-E)液局注療法,他の3例に対してはHS-E液局注療法後,高周波電気凝固療法を併用した.その結果症例1,2,4は内視鏡的止血法で永久止血を得たが,症例3は第5病日に大量吐血後ショックに陥ったため緊急手術に踏み切り,胃切開後病変部の結紮切除を行なった.Exulceratio simplex(Dieulafoy)に対する内視鏡的止血に関する報告は少ないが,この治療法は本症に対し十分止血効果があると思われる.文献的考察を加え述べた.
著者関連情報
© 社団法人日本消化器内視鏡学会
前の記事 次の記事
feedback
Top