抄録
肝転移を伴う悪性膵ラ氏島腫瘍によるWDHA症候群の1症例を報告した.症例は59歳女性で周期的に出現する水様性下痢を主訴として来院した.上部および下部消化管のX線検査,内視鏡検査などでは異常は認められなかったが,血中のVIP(Vasoactive Intestinal Polypeptide)は著明な高値を呈した.他にPancreatic Polypeptide, Calcitonin, Somatostatineも血中濃度の増加がみられた.膵原発巣組織中ではVIP, Pancreatic-Polypeptide, C-peptide, Somatostatin,Calcitoninが,肝転移巣ではVIP,Glucagon,Somatostatinが腫瘍組織中で産生されていることが,ホルモン含量のRadioimmuno-Assayおよび免疫組織化学的検索で判明した.