日本消化器内視鏡学会雑誌
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膵胆管合流異常の臨床的取り扱いについて
―内視鏡的乳頭括約筋切開術の適応とその意義―
播磨 一雄富士 匡秋山 哲司野口 隆義衣川 皇博浅上 文雄天野 秀雄相部 剛有山 重美竹本 忠良
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1986 年 28 巻 3 号 p. 523-530

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抄録

 自験例31例の膵胆管合流異常症の臨床的特徴およびその取り扱いについて再検討を行なった.そして本症の経過観察例における内視鏡的乳頭括約筋切開術(以下,EST)施行例3例の経験にもとついてその意義と適応について考案を加えた. 本症の治療の原則は,膵液の胆道内への逆流を排する外科治療の立場が確立されているが,個々の非癌例に対する臨床的取り扱い法には必らずしも画一的に対処できない.このような背景においてわれわれは,本症の合併症(総胆管結石をはじめとする)を治療する目的でESTを施行した. 今回ESTを施行した3例は,われわれの分類ではnon-CCC(III 型)2例とCCC(II 型)1例である.結果は,non-CCC(III 型)においては,手技的にも容易に,しかもなんら合併症もなくESTの治療に成功した.一方,CCC(II型)では結石の治療に成功したものの,EST手技上予期できなかった合併症,急性膵炎の発症を経験した. 以上の経験からわれわれは,1)non-CCCは胆嚢癌の合併頻度が高く,ESTの臨床的意義に疑義を持しているが,ESTは必らずしも禁忌とはならない.2)一方,総胆管下部に長い狭窄を有するCCCや,下部(括約筋直上)に嚢腫状拡張部を有するCCCに対するESTは少なくとも禁忌と考えざるをえないと結論した.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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