1986 年 28 巻 3 号 p. 531-541
抗生物質起因性腸炎49例を内視鏡所見によって4群に分類し,臨床像を比較検討するとともに,28例については色素散布法及び拡大観察法によりそれぞれの治癒過程を観察した. 49例の内訳は偽膜性大腸炎(PMC)18例,急性出血性大腸炎(AHC)15例,アフタ様大腸炎(APC)13例,分類不能3例であった.平均年齢はPMC63.6歳,AHC38.2歳,APC54.7歳,男女比はPMC1:5,AHC1:0.9,APC1:3.3であり,病悩期間はPMC28.7日,AHC15.5日,APC20.6日であった.PMCとAPCは多剤非経口投与例が多く,AHCはPC系の単独経口投与例が多かった.治癒過程では,PMCは点状陥凹を残し,腺窩の大小不同や配列の乱れた部位がみられたが,AHCは瘢痕を残さず,APCはタコイボ様病変が漸次平低化し,点状陥凹を残して治癒した.