日本消化器内視鏡学会雑誌
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大腸局所血行動態の検討
王 康義松永 隆酒井 正彦内野 治人三宅 健夫
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1986 年 28 巻 3 号 p. 542-549

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抄録

 大腸局所血行動態の部位による差違および疾患による変動をみるため,レーザードップラー法を用い,正常人47名,潰瘍性大腸炎13名(のべ23回),肝硬変症9名を対象に大腸局所血流を測定し,その意義を検討した. 正常人における大腸各部位の局所血流は,盲腸および結腸各部位では差を認めず,直腸のみ有意に低値であった.横行結腸の結腸紐付着側と非付着側との間にも差を認めなかった.病的状態として,潰瘍性大腸炎活動期の直腸局所血流は緩解期および正常人と比べ有意に高値であり,緩解期にはほぼ正常人と等しく,水素ガスクリアランス法による既報の結果と一致した.肝硬変症では,直腸およびS状結腸の局所血流はともに正常人と比べ有意に低値であった.以上より,腸管局所の炎症および門脈圧亢進症が大腸局所血流に影響を及ぼすことが示された.また,レーザードップラー法は,大腸局所血行動態の解明に有用な方法と考えられた.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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