1986 年 28 巻 3 号 p. 614-618_1
症例は52歳男性で,右季肋部から背部の痛みを主訴として入院した.約2年前に右季肋部痛が出現し,1年前には黄疸のため近医でERCPを施行し,総胆管の拡張を指摘されたが,黄疸も軽快し,その他の異常所見がないため放置していた.今回入院時のERCPでは総胆管は径約20mmと拡張を示したが,結石像や腫瘍像などはみられなかった.乳頭部の生検の目的で内視鏡的乳頭括約筋切開術を施行すると,乳頭の切開部に小腫瘤がみられた.生検の病理診断はwell differentiated adenocarcinomaであった.切除後の病理診断から,乳頭部胆管(Ab)原発の比較的早期の乳頭部癌と診断された.確定診断の上で,内視鏡的乳頭括約筋切開術が非常に有効であった.