日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
長期経過観察した原発性硬化性胆管炎の1例
平井 信行加登 康洋松下 栄紀米島 学田中 延善小林 健一服部 信中沼 安二油野 民雄
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 28 巻 3 号 p. 606-613

詳細
抄録

 原発性胆管炎(PSC)の長期観察症例を報告する.症例は30歳男性で,全身倦怠・掻痒感を認め来院した.検査所見は著明な胆汁うっ帯型を呈したが,黄疸はなくHBsAg., HBsAb., AMAは陰性であった.ERCPでは広汎な肝内・肝外胆管のconstricturing and beaded appearance, diverticular outpouchingを認めたが,胆石は認めず,膵管像は正常であった.肝組織像では,グ鞘の腺維化,細胆管増生,隔壁胆管周囲のconcentric fibrosisが認められた.以上よりPSCと診断し経過を追跡した.約6年の間,自他覚症状に著変はみられなかったが,GOT,ALPは徐々に上昇し,時に黄疸が出没する様になった.6年後のERCPでは,胆管像での狭窄性変化が進行し,肝組織像でも,グ鞘の線維性拡大,胆汁うっ帯像の進行が認められた.大腸内視鏡検査では,非連続性の非特異的大腸炎の合併が認められた.以上,本例では,約6年間の経過で,徐々に病変の進行を認めたが,その進行は比較的緩徐であった.

著者関連情報
© 社団法人日本消化器内視鏡学会
前の記事 次の記事
feedback
Top