1986 年 28 巻 3 号 p. 659-663_1
プッシュ式小腸ファイバースコープ,SIF-Bが開発・市販され既に10年が経過し,その臨床的有用性は十分に確立されてきているが,器械的特性の面では旧式となってしまったのも事実である.今回開発されたプッシュ式小腸ファイバースコープ,SIF-10はSIF-Bに比べ強力なアングル機構と広角の視野,高い解像力を有している.われわれの施設でもSIF-10を実際に臨床に用いる機会を得て20例に小腸内視鏡検査を施行した.その成績はSIF-Bによる成績と比較して,挿入性・所要時間の両方で若干の向上を示しており,SIF-10はSIF-Bに取ってかわる器種であると考えられた.しかし,諸性能の顕著な改良にもかかわらず,挿入性において飛躍的な伸びが見られなかったことは,プッシュ式の方法論自体の限界を示唆するものであり,現時点ではなお,十分な小腸内視鏡検査を行うには多方式の使い分けが必要であると考えられた.