日本消化器内視鏡学会雑誌
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教室における内視鏡的胃癌深達度診断の現況
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1986 年 28 巻 4 号 p. 748-758_1

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抄録

 最近5年間に,当科の内視鏡検査で胃癌と診断され,胃切除術が行われて深達度が確定した300病変の胃癌について,早期癌か進行癌かの内視鏡検査による深達度診断の精度を検討した. それによると,切除術が行われた胃癌病変の83.7%が正診,16.3%が誤診であった.m癌の26.0%,sm癌の48.9%が進行癌と診断され,pm癌の21.4%が早期癌と診断されている.早期癌類似進行癌と診断されたものの40.7%が早期癌である.早期癌を進行癌として誤診する傾向が強い. 年齢別の正診率では,20~29歳66.7%,30~39歳71.4%と,39歳以下では正診率が低くなっている.占居部位別の正診率では,CMA分類のMの癌が76.3%と低く,前壁の癌が75.6%と低い.病変部の大きさ別にみると,2cm以下の小さな進行癌と,6cmを越える大きな早期癌の正診率が低い.術後の病理組織別にみると,signetring cell carcinomaでは74.1%と正診率が低く,well differentiated tubular adenocarcinomaも80.0%と,正診率がやや低い傾向がある. 以上のように,通常の内視鏡検査で観察し,認識し得る胃癌の深達度診断には,限界がみられた.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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