日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
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特異な肝表面像を呈した日本住血吸虫症の1例
―虫卵結節の腹腔鏡像を中心に―
吉岡 直樹守田 善行松浦 達也山下 秀治西村 公一池田 敏渡辺 誠平川 弘泰福本 四郎島田 宜浩
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1986 年 28 巻 4 号 p. 818-825

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抄録
 慢性日本住血吸虫症に罹患した59歳男の腹腔鏡所見上,黄色色調が目立つ,不整形の小結節(直径100~200μ)を多数発見した.この黄色小結節の由来について,過去における腹腔鏡所見,家兎感染実験および剖検所見の記載から検討したところ,(1)日本住血吸虫症の肝被膜面には多数の虫卵結節が存在すること,(2)虫卵結節は門脈枝末梢部に多いが,肝小葉内部にも存在し得ること,(3)肝被膜面の白苔,瘢痕,陥凹または被膜の肥厚部位に,多数の虫卵結節が集合して発見されること,(4)組織検査における虫卵結節と大きさが等しいこと,(5)虫卵結節はその大きさから,拡大腹腔鏡観察に適し,通常の腹腔鏡検査では見落す可能性があること,(6)最近報告された2例の慢性日本住血吸虫症の腹腔鏡所見で類似の黄色物質(1例は虫卵結節を疑うと記載)が発見されていることなど,この黄色小結節が日本住血吸虫症の虫卵結節であることを支持する所見が得られ,本結節を虫卵結節として,不都合な事項は発見されなかった.以上のことから,上記黄色小結節を日本住血吸虫症の虫卵結節と判定できるものと考えた.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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