抄録
われわれは大腸癌切除標本の螢光を検索中,偶然に癌とはことなる日本住血吸虫卵(日住虫卵)の特徴的な螢光を発見した.今回はこの症例を用いて,大腸における日住虫卵の診断に対する固有螢光観察の有用性を検討した.螢光検査に用いられた励起光は514.5nmのアルゴンレーザーであり,螢光分析器はPAR社製のOMA-2を用いた.肉眼螢光観察後,われわれが開発した螢光スペクトル分析用の石英ファイバーを用いて,密着法により,直径約2.5mmの範囲の大腸粘膜の螢光スペクトル分析を行った.結果:(1)大腸の日住虫卵に一致して,特徴的な橙赤色の螢光が認められた.この螢光観察法は日本住血吸虫症の診断に役立つものと考えられた.(2)この特徴的な螢光のスペクトルは612mmにあり,大腸癌の螢光とは異なっていた.(3)粘膜筋板または粘膜下層の日住虫卵の螢光がとらえられたことから,大腸のこれらの部位に存在する微小螢光物質を検出できる可能性が示唆された.