抄録
当院開設以来1981年10月までに切除された胃スキルス292例中,術前に内視鏡検査が施行されたものは241例であった.これらのうち内視鏡的に早期癌と誤診されたものは5例(2.1%)であった.この5例に,食道癌手術時に発見された胃スキルスの早期癌誤診例1例を加えた6例と内視鏡的に経過観察し得た13例の検討から,胃スキルスの発育進展様式は次のように考えられた.(1)胃壁硬化を来す前段階の"胃壁の伸展性良好な時期。の期間はそれ程長期間ではない.(2)広汎な壁硬化に至る期間は極めて短期間であり,これは単にcollagenやfibrosisの量的関係により引き起こされると考えるよりは,むしろtriggerとなる機能的側面(inducerの存在)を無視できない.