抄録
Strip biopsyによる内視鏡的胃粘膜切除後には,その切除創として,手技の特性にもとずきU1-IIの人工的な胃潰瘍が形成される.Strip biopiy局所で腫瘍性病変が完全に切除された場合,この人工潰瘍は潰瘍慢性化素因をもたないヒト正常胃粘膜の再生にしたがって治癒する.このたび高齢者の幽門腺領域における腫瘍性病変Strip biopsy後人工潰瘍11病変の治癒経過を検討したが,これらはH2ブロッカー療法により4週前後で治癒した.局所の幽門洞胃炎の程度は治癒速度に影響を与えず,5週目以降に治癒した潰瘍は4週までに治癒したものよりも大きかった.さらに対象の27%に腺窩上皮の過形成による隆起型潰瘍瘢痕がみられた. ヒト臨床例での潰瘍治癒過程を検討する上で,潰瘍発生・慢性化素因を持たない部位の潰瘍は,潰瘍治癒過程の正常対照あるいは急性潰瘍モデルの一つとして興味深いと思われる.