抄録
症例は49歳男性.昭和60年10月ジョギング中に下血をきたし,来院した.緊急内視鏡検査にて,十二指腸下行部の隆起性病変より噴射状の出血が認められ,エタノール局注にて止血に成功した.しかし,第14病日に再出血をきたしたため,開腹術施行,同部を楔状切除して救命した.組織学的検索により,小隆起は静脈瘤と判明したが,自験例は術後の血管造影で門脈圧亢進を伴わず,他の部位にも静脈瘤をみとめなかったため,血管奇形によるものと考えられた. 十二指腸の静脈瘤は1931年Albertiが報告して以来,海外本邦を合わせて97例を数えるが,ほとんどが門脈圧亢進症を伴うもので,血管奇形によると考えられる症例は1966年にShearburnらが報告したのが最初で,自験例が4例めである.