抄録
症例は37歳,男性.腹部膨満感を主訴として来阮,腹水・黄疸・肝障害にて入院した.初回腹腔鏡検査にて肝表面の平滑な半球状再生塊と深い溝状陥凹を認め馬鈴薯肝と診断した.組織所見は軽度の慢性非活動性肝炎であった.食道静脈瘤を認め,内視鏡的食道静脈瘤硬化術を施行した.施行後,第6日目より発熱・発疹・消化器症状を伴う肝障害の急性増悪をきたした.薬剤投与による肝障害の増悪を疑いリンパ球刺激試験を行った結果,抗生剤ラタモキセフナトリウム(LMOX)とシメチジンに陽性を示した.増悪後の腹腔鏡検査では肝の再生結節は肥大し,不均一な緑色調を呈し,多数のリンパ小泡を認めた.組織所見は小葉改築傾向を伴う慢性活動性肝炎であった.本症例は入院時より肝予備能の低下を認め慢性肝不全の状態にあったが,さらに薬剤性肝障害の修飾が加わり,馬鈴薯肝の機能的・形態的異常を示し特異な経過をたどった1例であった.